経済・政治・国際

2018年4月 7日 (土)

イラク日報がなぜ1年間も隠ぺいされたのか

自衛隊のイラク派遣で、日報は残っていないとしていたにもかかわらず、外付けハードディスクに残っていたことが判明した。
紙の情報でないため、企業内でもこうしたことはよく起こるものだ。外付けハードディスクは、おそらくバックアップのために使っているものだろう。担当者がこうした庁内だけでなく、クラウドストレージや自宅のPCで保存している場合もある。
すべての情報を確認することはむずかしい。

しかし今回の最大の問題は、実は日報のデータが残っていたことが、2017年3月に判明していたにもかかわらず、実に1年もの間、防衛大臣には報告されていなかったことだ。
これは探して見つからなかったのでなく、幹部の意思によるものだ。

小野寺大臣は防衛省の幹部へ緊急で訓示したが、シビリアンコントロールの重要性を、制服組にホンネで分からせるのは難しい面がある。旧日本軍の大本営がどのように国民を欺いてきたか、そうした戦前の歴史を教材にして、ホンネでディスカッションする研修の場が望まれる。

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2017年1月 8日 (日)

移民をどこまで受け入れるかを決めてから国際化を議論せよ

2016年は、英国のEU離脱決定、米国ではトランプ氏の大統領当選など、国際政治が大きな転換点を迎えた年だった。

2017年はドイツで総選挙、フランスで大統領選がある。ここでも移民やイスラム排斥などの保守が進出するようだと、この傾向がさらに進むことになる。

第二次大戦後の世界は、EU統合を象徴にグローバリゼーション=国際化をキーワードに進めてきたが、見直しを考える時期にきたようだ。中間層の白人所得が下がり、失業者が多くなったという、米国の状況が象徴的だ。

国際化を進めるに当たり、移民の受け入れもどこまで許容するのか、その限度を決めずに進めてきたことが、今回の大変革につながっているようだ。EUに参加した国々は、欧州内で通貨統合を行って経済交流を盛んにし、ともに発展していこうというコンセプトに賛同したわけだが、それがアフリカや中東などから、イスラム系を含めてこれだけ移民や難民が押し寄せるとは、予想していなかった事態だろう。

日本は極東の島国という環境があり、欧州の問題を実感していない国民が多いので、移民排斥のニュースなどを見ると、気の毒に思う人が多いと思われる。だが「国際化の時代だから」を旗印に、日本も自由に移民が入ってきてよい国にするべきだと思うだろうか。たとえば北朝鮮から、毎日何千人もの人々が船に乗って流れ着いてきたらどうするのか、欧州はいままさにこうした状況になっていることを理解したうえで、難民の報道を見る必要がある。

トランプ氏が、メキシコとの国境に壁を作るとの発言が支持される理由が分かる。最近では、トヨタがメキシコに新工場を建設する計画に、異論をはさんだ。トヨタでは、すでに米国内にも生産工場をいくつも持って、米国人の雇用に貢献しており、米国の工場をメキシコへ移転するわけではないから、米国民の雇用を減らすわけではない、と説明している。

しかしメキシコの安い人件費で生産されたカローラが、米国工場でのカローラより安いなら、米国工場の製品は売れ行きが低下し、ひいては生産調整や雇用の削減につながっていくことは、充分に予想される。トヨタの説明は、その点でトランプ氏への説得力には欠けている。

世界には、一日1ドル以下で生活している人が、現実に何十億人も存在している。こうした貧しい国々に対して、できる範囲で経済援助をするのは当然よいことだが、グローバリゼーションの名のもとに、移民も制限なく受け入れて、日本で働いてもらおうと考えるのか、こうした限界ラインをしっかり定めたうえで進めていくことが重要だ。

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2016年12月17日 (土)

オスプレイの沖縄不時着大破はパイロット判断を賞賛してよい

沖縄で12/13夜、米軍のオスプレイが空中給油の訓練中にプロペラを損傷、名護市近くの海に不時着水して大破した事故が起きた。

この事故について、沖縄県の安慶田(あげだ)副知事が米軍基地へ抗議に訪れた際、沖縄米軍トップのニコルソン中将は、「住民に被害を与えないように最善の選択をした。彼らの行動は感謝されるべきで表彰ものだ」と、机をたたいて開き直ったということが報道され、沖縄県民の怒りを増幅させている。

安慶田副知事は、「まるで植民地主義そのものの意識を感じた」とインタビューに答えているが、しかしマスコミはニコルソン中将も取材すべきではないか。

大破した米軍機には5人の米兵が乗っており、2人が負傷したものの全員が救助された。普天間の住宅を避けて行き先を変え、海面に不時着したパイロットの判断という点では、確かに最善だった。

沖縄県としては、オスプレイそのものを配備するなという姿勢が根本にあることは理解できるが、単にプラカードを掲げて抗議する住民と同列になるのでなく、行政側の幹部なら会話の持って行き方を工夫すべきではなかったのか。

事故は遺憾だが、まずは住宅地を避ける判断をしたことについては評価して、乗員に死者が出なかったことに共感を示し、負傷した2人の状況はどうかなど、まず米軍側と感情を共有する姿勢を示すのだ。

その次に、それにしてもオスプレイは事故が多いことについて、県民が非常に不安を高めている、といった持って行き方をすれば、ニコルソン中将の反応は違っただろう。「心配かけて、申し訳ない」のひと言くらいは出たのではないか。

少なくとも彼が机をたたいて怒鳴ることはなかっただろう。ニコルソン氏だけの発言が報道されているが、まさに沖縄の副知事が「売り言葉」から入った証しだ。

米軍司令官を怒らせて、その場面だけを報道させ、沖縄県民の怒りを盛り上げようという演出意図があったのなら、その点では成功したのかも知れないが、対立をわざわざ煽る手法は、政治的に良い解決方法に至ることを困難にするだけだ。

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2016年11月12日 (土)

私も“隠れトランプ”の一人。ヒラリー落選で良かった

11/8の米国大統領選は、ほとんどのマスコミ、評論家の予想を覆して、トランプ氏が当選した。事前の世論調査に表れていない“隠れトランプ”が、一定数いるとは言われていたが、その人たちが果たしてどれくらい存在しているのか、またその人たちが投票に出かけるのかを、まったく予想できていなかった。

しかし結果的に“隠れトランプ”の人たちは、実際に投票所へ足を運んでいた。それだけ、米国の中でも格差社会が進み、富がごく一握りの人たちに独占され、「まじめに働いても幸せになれていない」という米国白人層の危機感が、高まってきていたということだろう。

この危機感は、すでに数年前の「We are 99%」の市民運動で、顕在化していた。また民主党の予備選でも、格差社会の是正が最も大事だと主張した、サンダース上院議員に若者の支持が多く集まって、善戦した現象があった。民主党がサンダース氏を候補者に選んでいたら、今回の結果は違ったかも知れない。

ヒラリー氏は「女性大統領になりたい」という気持ちが強く前面に出ていて、テレビ報道を見る限りではあるが、米国をどのような方向へ持っていきたいといったビジョンが、分かりにくかった。

また選挙戦の最終版で、レディーガガをはじめ有名タレントの応援をつぎ込んだことが、「ヒラリーは結局ウォール街のセレブ層とともにある人間だ」という印象を強めてしまった。私自身も、ヒラリーが当選しなくて良かった、米国民は正しい選択をした、と率直に思っている一人だ。

なお、“隠れトランプ”の人の思いの一つに、男性特有の心理も少しあるのではないか。「国家機密を個人のメールでやりとりしていた危険性に比べれば、美人の女の子にちょっかいを出したくらいは、不倫をしたのでなければ、そうたいした問題ではない」。また、「女では米国大統領は務まらない」という“ガラスの天井”の心理だ。

こうした男の内心は、発言すれば「女性蔑視、男尊女卑か」と言われてしまうとわかっているので、口には出さない。しかし心の中では思っている。こうした心理のある“隠れトランプ”の事前調査も、マスコミはやってみるべきだった。

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2016年10月22日 (土)

連絡くれぬボブディランを批判するノーベル賞委員の傲慢

2016年のノーベル文学賞に選ばれたボブ・ディラン氏に、ずっと連絡が取れていないことについて、選考委員会のメンバーが10/21、スウェーデン公共放送のインタビューで「無礼で傲慢だ」と批判した。

だが、そもそもノーベル賞を決定する前に、受賞候補者に対して「受賞が決定した場合、受けていただけるか」という打診をしておくべきでなかったのか。そうした事前の確認もせずに賞を一方的に発表しておいて、連絡が取れないからと批判するのは、それこそ傲慢な姿勢に映る。

ボブ・ディラン氏のシンガー活動は、もともと既存の権力のワク外で、歌を用いて主張してきたものだ。ノーベル賞は権威あるものだから、受賞が決定すれば、だれもが光栄に思って喜ぶはずだというのは、主催者側のおごりではないのか。

ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは、豪華な祝賀パーティーを見て、「これだけの宴会のお金を、貧しい人々に回すことができたら・・・」とつぶやいたという話もある。

ノーベル賞の受賞を素直に喜んで、豪華な授賞式に出席することを光栄に思う人が、一般的に多いことは事実だが、ノーベル賞を授与する側は、権威主義が“上から目線”になっていないかについても、常に自らを見つめていく必要があるだろう。

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2016年9月 2日 (金)

「非正規をなくしていこう」などと臆面もなく訓示する安倍首相

 安倍首相は9/2、内閣官房に設けた「働き方改革実現推進室」の開所式で訓示し、モーレツ社員・長時間労働を美とする考え方を変えていくとともに、「世の中から非正規という言葉を一掃していく。」などと述べた。(朝日新聞報道)
 
 だが、もともと派遣労働者法の改正を強行し、結果として非正規労働者を増大させ、格差社会を作り出すこととなった原因を作ったのは自民党であり、安倍政権だ。
 
 当時の安倍首相は、「正社員の立場に縛られない、自由な働き方を求める人が増えている時代に対応するため」などと、理由を力説していた。
 
 それを「世の中から非正規という言葉をなくしていく」などとは、臆面もない発言だ。現在の非正規労働者たちの中で、「自分の生き方ができて良かった」と考える人が、果たして何パーセントいるというのか。ほとんどは、いったん非正規になると、希望しても正社員になれず、低賃金に苦しんでいる人たちだろう。
 
 もちろん、過去の発言や政策を、いつまでも正しいものとして踏襲するのでなく、常に改善はあってよい。ただし、派遣労働者を増やしたかつての政策が正しかったのか、その総括はきちんと行う必要がある。
 
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2016年6月27日 (月)

英国民よ、EU離脱を決めたからには腹をすえよ

 EU離脱の是非をめぐって、英国民は僅差ながら離脱を決めた。だがその直後から、予想される経済の混乱や影響を目の当たりにして、英国内で不安の声が大きくなっている。
 
 経済の混乱は、当然予想されたことだ。それを避けるにはEU残留を選択するのがふつうだ。英国民のこの選択は、今より貧しい国になっても、EU政府の言いなりにならず、英国としての独自性を持ちたいという、プライドの問題であったはずだ。
 
 英国で離脱派が過半数をとった背景には、EUの横暴が原因のひとつにある。中央政府が地方の言い分や状況に配慮せず、強権でルールを決めてしまう。EU、前身のEC設立の発端は良い理念だったが、人間は権力を持つと、次第に変遷してしまうものだ。EUはもっと各国の地方自治という事情に配慮すべきだった。
 
 たとえば「漁獲量の公平な割り当て」と称して、英国の漁民は自分の港の近くで魚をとれず、他国の漁船をしり目に、遠く沖合へ出なければ漁ができない規制を受けているという。日本でいえば、仙台の漁師は仙台湾内での漁が禁止されて、沖合に出なければならず、仙台湾内では岩手県の漁船だけが網を入れることができる、といった規制のようなものだ。こんな割り当てをやっていたら、宮城県の人々が怒るのは当たり前だろう。
 
 英国の国民投票結果を見て、日本の財界人や株屋は、経済に波及することを恐れて、非難している。だがたとえば、「東アジア共栄圏」などという名称のもとに、中国・日本・韓国・フィリピンの4か国でEUのような共同体を作り、経済も通貨も共有しましょう、などというプランがあったとしたら、日本国民で賛成する人が、いったいどれだけいるだろうか。
 
 この4か国で共同体にして、関税は無料、人の交流や移住も就職も自由、などとすれば全体の経済力は向上するだろう。しかし日本人でそれに賛同する人はほとんどいないことが容易に予想される。
 
 英国民の選択については、日本人は単に経済が混乱するかどうかでなく、こうしたアイデンティティーを尊重する気持ちで見守るべきだ。それによって生じる株の下落程度は、たいした問題ではない。
 
 結果におじけづいてきた英国民にも、同じことを言いたい。

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2016年5月31日 (火)

消費税増税を延期するなら歳出を下げよ

安倍政権は2016年5月、消費税を10%へ上げるのを2年半延期する方針を打ち出した。伊勢志摩サミットで安倍首相は、世界経済がリーマンショックの直前と似ている、などと各国首脳からはまったく同意を得られない分析を公言し、経済が分かっていないことをさらけ出した。

単に消費税を先延ばしする理屈をつけたいことが、一般庶民からも見え見えだ。アベノミクスを打ち出し、当初は株価をつりあげるような小細工をして、短期間は株価は上がったが、その後はメッキがはげてきた。やはり国民の意識は委縮し続けていることが、日増しに明らかになってきた。

今の日本は高齢者が増えている時代だ。昔の高度成長時期のように、若い労働力が多かった時代と、人口構造が根本的に異なる。池田首相のような、所得倍増政策を掲げて、給料を上げて活性化する時代でないことから、政策を考えなくてはいけない。

年金で暮らす高齢者にとっては、労働世代の給料が上がっても、関係ない。むしろ賃金が上がって物価も上がれば、年金での暮らしは厳しくなり、消費を引き締めるしかない。

人間の生活でも、現役時代のような給料やボーナスをもらっていた年齢から、年金で生活する年代に入ったら、相応の経済的な生活に切り替えるのが当たり前だ。家族で海外旅行を楽しんでいた現役時代から、年金生活に入ったら、夫婦で近場の温泉旅行に切り替える。クルマも、年金生活になったら軽自動車に切り替える。貯金を食いつぶしていくのでなく、そうした生活の切り替えが必要なのだ。

同様に国民経済も、高齢者が多い時代に入ったら、賃上げでインフレを起こして、経済を活性化しようという政策は誤りだ。税金や社会保険料負担を上げるのでなく、歳出そのものを減らして、国民みんなで質素な生活をして暮らしていける社会をめざすべきだ。

株価上昇や高度成長を夢見ている自民党の考え方では、老人・弱者切り捨ての日本になり、格差社会が広がるいっぽうになってしまう。

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2015年11月25日 (水)

専業主婦・第3号保険者の60歳期限を周知させよ

サラリーマンの専業主婦は「第3号保険者」として、自分で年金保険料を納めなくても、夫が厚生年金に加入していれば、65歳から国民年金を受け取ることができる。

しかしこの第3号保険者の有効期間は20歳から60歳までになっていることが、あまり知られていない問題がある。

国民年金は最低25年加入した人に受給権が発生するが、40年加入しないと満額を受給することはできない。したがって専業主婦が60歳になれば、夫が引き続き勤務していても、加入期間40年に達するまでは国民年金保険料を納める必要があるのだ。

高校卒で就職し、その後結婚してサラリーマンの専業主婦になった女性であれば、60歳になったときには満40年以上経っているから問題ないが、4年生大学を卒業して就職した場合は、22歳何か月かで社会人になっている。だからその後結婚して専業主婦になり、60歳で第3号保険者の期限が到来した時点では、年金の加入期間は37年と何か月であり、満額支給される40年の加入期間に対して、2年以上短いことになる。

現在の年金支給基準で換算すると、65歳からの基礎年金(国民年金)支給額は、保険料納付の不足分1か月当たり、年額で約1,600円少なくなるという。したがって仮に2年6か月(30か月)足りていない人は、65歳からの年額で48,000円、月額にすると4,000円少ない支給額になる計算だ。

サラリーマンの夫が途中で脱サラして自営業に転換した場合には、夫婦ともに国民年金に切り替えて保険料を支払う必要があるが、このような転職があれば、国民年金への切り替えを意識しやすい。

しかし夫がずっと同じ会社で働き続けている夫婦にしてみれば、妻が60歳になったからといって、妻が国民年金に切り替えて保険料を支払う必要があるなどとは、知らない国民がほとんどではないか。

対策は簡単だ。年金機構では加入者の住所や生年月日は当然分かっているのだから、満60歳が近づいた第3号保険者(主婦)に、案内通知を出せばいいのだ。
「第3号保険者の期限は満60歳です。もし60歳までに加入期間が40年に足りない場合は、国民年金保険料を納めないと、65歳からの国民年金が満額支給されないので注意してください」といった通知だ。

いま格差社会が進行し、保険料を支払えない人が増えてきて、納付率が低下している。この納付率を改善することは、国の政策目標にもなっている。まずまず順調に人生を歩むことができた、サラリーマンと専業主婦の夫婦にしてみれば、妻が65歳から満額の年金を受け取るためにあと2年分ほどの国民年金保険料を納めることは、たいして苦にならないだろう。

国はこうした専業主婦に、分かりやすい案内をタイムリーに発信して、少しでも納付率を上げるべきだ。

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2015年9月 9日 (水)

マイナンバーはポイントカードではない

軽減税率で品目を決めるのは「めんどうくさい(麻生財務相)」からと、財務省がなんともバカな案を出したものだ。

買い物に行くたびにマイナンバーカードを持参して、小売店のレジから自分の食品購入明細データを国へ送信し、あとで1人4,000円を上限に還付するという。自民・公明ともに「消費税10%導入時には軽減税率も実施」と公約して票を得たのを、反故にするようなものだ。

日本中のすべての小売店が、ICカードの読み取り端末器を備えて、国のデータセンターへ送信する回線を持たなくてはならない。全国民にマイナンバーのカードが行きわたらなくてはならない。こんなことが2017年春までに実施できるわけがないだろう。

マイナンバーカードを仮に作ったにしても、このカードは住民基本台帳カードや印鑑登録カードのように、ふだんはしっかり家の中で保管しておき、証明書を取りたいときにのみ持ち出すものだ。まるでポイントカードのように、いつも財布に入れておいて、買い物のたびに読み取らせるものではない。

マイナンバーの導入について、国は厳重なセキュリティを約束し、法律でも個人情報漏えいよりも罰則規定を重くしている。これから従業員とその家族のマイナンバーを預からなくてはならない企業に対しても、人事の特定スタッフ以外は社員のマイナンバーを扱ってはならない、などのセキュリティをガイドしてきた。

これを受けてすべての企業が、いま社内の機密情報規程を改定したり、システムのセキュリティを見直したりなどの作業に追われているところだ。

それが今回の財務省案のように、老人から子どもまでが、マイナンバーカードをポイントカードのように毎日持ち歩くことになっては、紛失や盗難によって毎日何百件もの「マイナンバー漏えい」が発生する事態になることは明白だ。企業もマイナンバーを厳重管理することが、まったくバカらしくなってしまう。

しかもこのシステムを整備するのに、3,000億円の予算を組むという。軽減税率を適用する品目を決めるのが困難だというなら、単に1人4,000円の定額給付を打ち出すほうが、まだマシだ。どういう感覚で、このような案を臆面もなく、また突然に出してくるのか、常識を疑う。

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